製品ラインナップ

無貌の神

恒川光太郎|KADOKAWA



[あらすじ]
赤い橋の向こうの禁断の地に彷徨いこんだ私。
この地には、顔のない神が坐して輝きを放っていた。
癒やす力を持つその神には、代々受け継がれている秘伝の奥義があった。
そのことを知った私がとった行動とは…?
罪人に青天狗の仮面を届けた男が耳にした後日談とは…?
死神に魅入られた少女による七十七人殺しの顛末とは…?
人語を話す囚われの獣の数奇な運命…などなど暗黒童話全6篇!

[
おすすめポイント]  ★★★☆
3話目の「死神と旅する女」をぜひ読んでほしいと思います。
天才的な剣の才能を持つ少女が、男に命じられるままに77人を暗殺してゆく
死神っぽくないすッとぼけた親父と、あまり考えずに行動する阿呆娘の
無意味な暗殺の旅が、実はとんでもなく意味のある旅だったんです。

恒川光太郎さんの作品では、こうしたよく練りこまれた物語が多々あり、
結末で点と点が繋がり、お見事!と読了感の良い作品に惹かれて、
また読みたいと思ってしまいます。
スカッとするだけでなく、ゾクっとする要素が結末にいい味を出している
ところもにくいですね。
つい映像化したものを見たいと思わずにはいられません。


[所蔵状況]
紙版書籍・メディアセンター : ◯
電子書籍・Nittai Digital Library : ×

カエルの楽園

百田尚樹|新潮社



[あらすじ]
ある日、平和な暮らしを奪われて生まれ故郷から脱出することを決意した、
アマガエルのソクラテスとロベルトたちは、安住の地を求めて旅に出た。
やがて、豊かで平和な国「ナパージュ」に辿り着く。
そこでは心優しいツチガエルたちが、奇妙な戒律「三戒」を守って暮らしていた。
だがある日、平穏な国を揺るがす大事件が起こり衝撃の結末がー。


[おすすめポイント]  ★★★★☆
面白そうな本は、予備知識を最小限にとどめ楽しみは後にとっておきたくなります。
『カエルの楽園』も然り、タイトルとあらすじからイメージできること以外、
ほぼ予備知識を入れずに読み始めてみたら、見事に裏切られます(笑)

主人公のカエルが『ソクラテス』というのも面白いです。
実在のソクラテスは、相手の矛盾をついて問答を繰り返す対話術でとても有名な人物です。
ソクラテスと対話すると、理解できているつもりになっていることや、
それが正しいと思い込んでいることが間違っていることに気が付くので、
相手を困惑させ、最後には怒らせることもしばしば…。
物語のソクラテスも誠実で柔らかい物腰のカエルなのに、
胡散臭い平和に違和感と疑問を感じ、納得できるまで質問を繰り返して、
だんだん余計なことをする面倒臭い奴とみんなをイラつかせます。
物語の中で真実の探求者としては、これ以上ない最適なキャラクターです。
他にも登場キャラクターの名前が実在人物で、ハマリ役にクスリと笑ってしまいます。

この物語で、とくに印象的なところが2つありました。(本筋からはそれますが…)
一つは、“世界は広いかもしれないが、どこも同じだ。これは狭いのと同じだよ”という台詞。
ソクラテスが返す言葉もでなかったほどの真理をついた言葉です。
物語では、どこも争いだらけで同じという解釈ですが、個人的には、
違いがあるということだけで、同じ場所にいても世界は広がるってことかなと
前向きに解釈してみたり。
もう一つは、守護者によって平和が守られているのではなく、
自分たちが平和であろうとする姿勢で守られているということです。
例えば、平和を監督している存在がいても争いがある国とない国があるのは、
争いが起こらないようにその国自身が平和に努めているからであると。
物語では、だから平和を監督している存在はもう必要ないと続くのですが、
守護者が偉大でも依存や過信せず、自らも守護者であろうとする姿勢は、
時に偉大な守護者よりも大切なものを守ることができるのかなと思ったり。

この本を一言でいうならば、“百田流イソップ童話”です。
イソップ童話には“教訓”が付き物ですが、
「この物語の教訓は何でしょう」と聞かれたら悩んでしまいますね。
この本からは、人それぞれ違った教訓を得るのではないかと思います。


[所蔵状況]
紙版書籍・メディアセンター : ◯
電子書籍・Nittai Digital Library : ×

教場

長岡弘樹|小学館



[あらすじ]
警察学校は、篩(ふるい)である。
警察官に採用された人間がまず配属される“警察学校”では、
学生は約半年間、教場(きょうじょう)と呼ばれるクラスで
厳格な規則に従ってあらゆる訓練および生活を送ることとなる。
ある日、初任科第98期短期課程の学生たちの担任が代わり、
やってきたのは風間という白髪の教官であった。
彼は、観察力に長け極限状態で生徒たちが抱いた邪(よこしま)な
思惑を暴き、警察官として適性のない人間を次々と篩にかけていく…。


[おすすめポイント]  ★★★☆☆
警察学校は、警察官にふさわしい人物へと養成する場所というよりも、
警察官にふさわしくない人物を淘汰する篩(ふるい)となる場所である。
この“篩”が、風間という寡黙で重厚感のある教官です。
一切の嘘や内に秘めた邪心までも見逃さない驚異的な才能の持ち主です。
このような教官の目の届かない場所が警察学校内にあるはずもなく、
過酷な生活でのストレスが事件につながっていく過程で、
学生たちの僅かな言動と心理を見破り、すべて炙り出していきます。
ここで引き起こる事件の衝撃といったら…闇(病み)は恐ろしいです。
そうして見込みのある者は残り、見込みのない者は去るのですが、
よくある成長物語特有の初々しさや甘酸っぱさなどはなく、
現実的な厳しさと怖さと覚悟がリアルに描かれています。

特に印象が残ったところは、ある学生が書いた卒業文集です。
それは、「人間には指紋ならぬ、“姿紋”がある」ということです。
警察学校で約半年間共に生活をすれば、皆体型がそっくりになるように、
人間の体型は人物を特定する有力な手がかりになるというのです。
確かに、体型は、生活の様子を言葉よりも有弁に語ります。
また、どのような意思で生活をしているのかも体型は嘘をつきません。
指紋は一生変わらないが、姿紋は変わる。なぜなら、人は変われるからだ。
と文集は締めくくられており、今の自分自身はどんな姿紋をしているのかや、
憧れる人物像はどんな姿紋なのかについて考えてみるのも面白いですね。
現在、2巻目が出版されたばかりで合わせて読んでみてはどうでしょうか。


[所蔵状況]
紙版書籍・メディアセンター : ◯
電子書籍・Nittai Digital Library : ×

夜市

恒川光太郎|KADOKAWA(角川書店)



[あらすじ]
高校の同級生だった裕司に誘われて「夜市」へと出かけることになったいずみ。
森の奥で開かれていた「夜市」では、黄泉の石、なんでも斬れる剣、老化が進む薬などが売られ、
それらを売っているのは、一つ目ゴリラ、のっぺらぼうといった妖怪たちだった。
そこから帰ろうとするものの、何か取引をしない限り、夜市から帰ることはできないという。
二度と帰れないと焦るいずみだったが、裕司が以前、夜市で「野球選手の器」と引き換えに
売り払ってしまった「弟」を買い戻すという目的に巻き込まれたことを知り…。


[おすすめポイント]  ★★★★★
まるでジブリの「千と千尋の神隠し」を感じさせる「夜市」の世界。
読んでいてワクワクしないわけがありません。
ここでは妖怪や鬼や悪魔たちが、かなりやばい代物を売り買いしています。
黄泉の河原の石・なんでも斬れる刀・老化を遅らせる薬など等。
しかも、1億円とか100万円とか本気で欲しいと思わなければ買わない金額。
そこまでして手に入れて、何に使うのか恐ろしい想像しかできません…。

そんな場所へ偶然に迷い込んだ子どもにも「夜市」のルールは容赦しません。
「弟」を売って置き去りにした罪悪感をずっと抱えてきた青年が、
「弟」を取り返しに友だち(しかも女の子)を連れて再び夜市へ。
何を企んでいるのでしょうか…想像通りならばただのホラー小説ですが、
巧妙な伏線が散りばめられ、結末に向かっての緊張感や結末のどんでん返しと
ただのホラー小説に隠し味がプラスしてあります。
ぜひ読んでほしいと思う鉄板の一冊です。


[所蔵状況]
紙版書籍・メディアセンター : ◯
電子書籍・Nittai Digital Library : ◯

はなとゆめ

冲方丁|角川書店



[あらすじ]
清少納言は28歳にして、帝の妃である中宮定子様に仕えることになった。
華やかな宮中の雰囲気に馴染めずにいたが、17歳の定子様に才能を認められ、
貴族たちとの歌のやり取りなども評判となり宮中での存在感は増していく。
そんな中、定子様の父である関白・藤原道隆が死去し、叔父の道長が宮中で台頭していく。
やがて一族の権力争いに清少納言も巻き込まれていき……。美しくも心ふるわす清少納言の生涯!

 

[おすすめポイント]  ★★★★☆
清少納言のイメージがガラリと変わる一冊です。
紫式部のライバルであり物事をハッキリと言う知的で強い女性いう印象ですが、
実は、雲の上の神々ような皇族・貴族の前では緊張のあまり気配を消したり、
同僚はみんな年下で名家育ちのデキる美人女御軍団に気後れしまくる…。
変なあだ名を付けられしまうような野暮ったい清少納言が面白いです。
超美少女定子様に呼ばれても恥ずかし過ぎて暗い夜にしか顔を出さず、
「見苦しい!」と年下上司の女御に一喝されるなど、
ちょっとドン臭いところに親近感を覚えたり(笑)

とはいえ、男性と互角に渡り合える教養があるところは凄いです。
すでに有名な和歌や漢詩をユーモアと機転の利いたアレンジで返すのが上手かった清少納言。
こんなクレバーな人だったのかと感心しつつ、自分もそのようなセンスが欲しいなと思ってしまいます。
昔は和歌や漢詩をこんな風に使ったのねっということもわかります。
ミュージカルで会話がわざわざ歌になっているように、
和歌などで普通の会話をハイセンスな会話にするって感じでしょうか。
言う人も聞く人も気が抜けない心理合戦のような会話…あな恐ろしや。
清少納言はというと、何気ない独り言までも和歌でつぶやく、
もはや和歌オタクか和歌バイリンガルの次元にいます。
同僚女御にも感心されつつツッコまれてました。
しかも、宮中の女たるもの和歌で挑戦されたら受けて立つべしと不敵に面白がるところは、
清少納言がどんな返事をするのか楽しみにしている登場人物同様に見ていて楽しいです。
読んで損はない一冊です。
 

[所蔵状況]
紙版書籍・メディアセンター : ◯
電子書籍・Nittai Digital Library : ×